親の叱責で子どもが萎縮してしまったら、試行するための積極性も吹き飛んでしまうでしょう。
こういうときこそ、親がやさしく対応してあげることが必要なのです。
「なぜ点数が悪かったのだと思う?」と、まずは子どもに聞いてみる。
そして、原因を一緒に考え、可能性のあることにトライしていきましょう。
このとき、子どもが言いたいことはすべて言わせてあげることも忘れてはいけません。
「だからあなたは・・・。
」という言葉が口をついて出そうなムッとくることでも、とにかく言いたいことをすべていい終るまで、だまって耳を傾けてあげましょう。
そうして話を聞くことで、ハッと気がつくこともあるはずです。
私の子どもが悪い点をとったのは自分が原因だと思う。
何よりも優先させるべきは、子どもの発想を大切にすることです。
それが自由にいろいろなことを考え発想するトレーニングにもなります。
そこから、他のことを試してみよう、何か新しい方法でやってみようという気持ちが生まれるのです。
試行力はこうしたことの繰り返しで培われていきます。
たとえば前日塾をさぼっていた子どもが、「ごめんなさい」と打ち明けたとします。
その場合も、決して叱らず、むしろ正直に打ち明けたことをほめてあげてください。
もしかしたらそのときだけでなく、数回にわたって塾を無断で休んでいたかもしれません。
でも、それを問いただしたりはしないこと。
一割でも秘密を打ち明けてくれたなら、それを評価してあげる姿勢が大切です。
子どもがチャレンジ精神を発揮してもなかなかうまくいかなかったら、簡単にできることを探して、試行させてみるのもいいでしょう。
さりげなく自信を回復させれば、さらに試行力を発揮して、さまざまなことをやってみようという気持ちになるはずです。
試行力をみがくことによる利点は、たとえばより自分に合った勉強法を見つけ、それを実行することで成績が上がっていくことです。
ひとまずそれに成功したら、親も子どもも安心できるでしょう。
でも、試行には終わりがありません。
仮に一つのいい方法を見つけたとしても、もしかしたらもっと成績が上がる勉強法があるかもしれません。
いいと思った勉強法を続けながら、さらに成績アップを目指して新しい勉強法を試行する。
それにより、成績はどんどんがっていき、当初目標した学校より一ランク、あるいは二ランク上に合格する力がついマンネリになってしまったら、試行力はそこでストップしてしまうかもしれないということを、頭の隅に置いておいてください。
新しく見つけた勉強法で子どもが、がんばっていたら、それを見守りながら、親はつねに観察を続け、他の可能性を探してあげるといいでしょう。
だれてきた子に効く、マンネリ打破法突拍子もない例ですが、アイドルタレントというのは、たいていが短命です。
一世を風塵したもつかの間、新しいアイドルが登場すると、あっという間に人気が下落し、テレビから消えるとともに記憶から忘れられてしまいます。
ところが、アイドルとしての地位を守り続けている例外があります。
〃モーニング娘。
〃です。
特別に歌や踊りが上手なわけではないし、とびきりの美人がいるわけでもありません(失礼!)。
テレビ番組のオーディション企画から誕生したグループで、圧倒的なオーラを放ってスカウトされたわけでもありません。
そういう彼女たちなのに、一九九七年のデビュー以来、飽きられることもなくトップを走り続けています。
その成功の秘密は〃つんく部〃の試行力によるものだと思います。
卒業や新規加入など、メンバー内で作るユニットがさまざまに変化していきます。
現状に甘んぜずつねに新陳代謝を繰り返す。
この〃つんく部〃および〃モーニング娘。
〃の試行力は、つねに進化し続ける頭のいい子を育てるうえで、大いに参考となるものでしょう。
私は留学中にアメリカのさまざまな流派の精神医学を勉強しました。
その際、集団精神療法の治療者養成ワークショップに参加したことがあります。
そこでは二○人くらいでグループを作り、一人のリーダーと全権大使を選び、他のグループと交流するという課題を与えられました。
参加者は博士号をとった心理学者や精神科医でしたが、最初は大混乱で、リーダーや全権大使を選ぶのさえ手こずりました。
一時は、スケープゴーティングや依存現象が起こり、グループは崩壊状態になりました。
知的レベルの高いおとなでさえ一時的なパニックになるのです。
クラスメイトやグループに関わるようになったとき、子どもにさまざまな問題が起こるのは当然のことでしょう。
イギリスの精神分析家ウィルフレッド・ビオンは、人間がグループを作ると、いじめに負けない「個」のつくり方・作業グループ。
課題を遂行しようとするグループ・基底想定グループグループ全体が病的なパターンの行動を起こすグループのどちらかになるといっています。
「基底想定グループ」はさらに、「つがいグループ」「依存グループ」「闘争・逃避グループ」という三つのパターンに分けられます。
実際に何人か集まった子どもたちを見ていると、これが顕著です。
仲良しでまとまるか、一人のリーダーに全権を委ねて従うか、あるいは、仮想の敵を作ってみんなで闘うか、逃げるか、です。
この中で問題となってくるのは、仮想敵をグループ内に作ってしまった場合。
つまり、ひとりをスケープゴートとして、「いじめ」が始まるのです。
仲間はずれやいじめの対象がひとりいれば、不思議とグループは団結します。
もちろん、子どもにはこのような状況には陥ってほしくありません。
そのためには、グループに染まりにくい自分、確立した「個」を、子どもの中に育ててあげることが必要です。
それは将来、上司や周囲の意見に惑わされず、自分が信じ貫こうと思ったことをやり遂げる力にもつながっていくのです。
「みんなで仲良く」を押しつけない集団心理の理論から考えると、実は、受験勉強でたいへんなときほど、いじめは起こりません。
なぜなら、「受験」という明確で共通の目標があるからです。
敵のない「無目標な」状況下こそ、グループの中に「仮想敵」を作り出すことが必要になってくるのです。
そこで、誰かひとりを「スケープゴート」にして、いじめます。
いじめられている子どもをかばった子が、逆にいじめにあうというケースがありますが、それは、正義感の強い子どもUかばう者の登場で、それまでいじめられていた子は、純粋な「スケープゴート」でなくなります。
そこで、かばった子を、次の仮想敵「スケープゴート」にして団結しようというのです。
たいていの場合、それまでいじめられていた子は、再び仲間はずれにされるのを恐れて、グループに従い、自分をかばってくれた子を「スケープゴート」にしてしまいます。
つまり、「みんなで仲良く」という教育のもとでこそ、実は、もっともスケープゴートやいじめが起こりやすいのです。
しかし、子ども自身が「個」を確立し、自分の価値観に基づいて考え、行動することができれば、このような現象を避けることができます。
グループの中に留まろうとするのは、自分に自信がないからです。
それはなぜか。
幼い頃は、親に庇護され、親の価値観の中で守られて生きています。
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